近年はスチールワイヤーラックもホワイトやブラックなどの粉体樹脂塗装を施したものが増えている印象です。しかし、カラーモデルがクロムメッキを駆逐するには程遠く、主戦場はあくまでギンギラギンのクロムメッキです。メーカー各社は大口顧客となる業務用も見据えながら、いかに低コストでサビないワイヤーラックができないかと模索し続けています。
業界のパイオニアであるエレクターは少なくとも2000年以前からクリアコーティングを採用しています。私が最初にホームエレクター購入した1999年はまだその表示がなかったと記憶していますが、20年を経てからスチールウールで表面を削ったところコーティングが剥がれたので間違いないです。
ルミナスラックはホームエレクターと同じ1994年の発売ですが、最初からクリアコーティングを施していたかどうかは分かりません。ただ、私が自宅用に購入した2004年には既にクリアコーティングを採用しており、2017年には廉価版のワイヤーラックまでクリアコーティングを施しています。
一方で、アイリスオーヤマの「メタルラック」はこれまでクリアコーティングを採用したという話は聞いたことがありません。しかし先日、驚くべき事実を目の当たりにしたのです!
※この記事は2024年7月25日時点の情報に基づいています
メタルラックがクリアコーティングを採用!?
アイリスオーヤマのメタルラックシリーズは、従来から”他社製品の3倍の厚さのニッケルメッキを使っているから防錆性が高い”という趣旨の表現を使っています。他社製品がいったい何を指しているのかはともかく、防錆性にこだわっているという意気込みはなんとなく伝わってきます。
それはさておき、今回のポイントはその下です。
防錆効果抜群の3層構造
水道の蛇口にも使われている防錆効果の高いクロームメッキ加工の上にさらにクリアコーティング加工を施した3層構造で水に強くキッチン等の水回りにもお使い頂けます。
ええっ!マジで!?
メタルラックがクリアコーティングを採用しているなんて初めて聞いたわ!
今までもクリアコーティングを施していたけれども黙っていただけなのか、はたまた新たに採用したのか。ただ、我が家で以前に使っていたアイリスオーヤマのメタルラックは普通にサビたので、少なくとも20年も前からクリアコーティングを施していたとは思えません。
ちなみに、この表現を見つけたのは「メタルシェルフ SE-918E」のページです。メタルラックと言っても正確にはライトシリーズ(廉価版)です。ほかのライトシリーズのサイズ違いや上位のレギュラーシリーズのページもザーッと調べてみましたが、同様の表現は見つけることができませんでした。
そこで、直接アイリスオーヤマに電話で問い合わせてみることに。
クリアコーティング採用は事実!
SE-918Eがクリアコーティングされているって本当ですか?
ただいま確認したところ、事実です。
SE-918E以外のメタルラックも全てクリアコーティングですか?
クリアコーティングと記載されている商品のみです。他の商品については商品ページでご確認ください。
かなり省略していますが、私が問い合わせた内容とアイリスオーヤマからの回答は概ね以上の通りです。少なくともSE-918Eにクリアコーティングが施されているということは事実でした。
あと他にクリアコーティングが施されているラックは、教えてくれないなら自分で調べるほかありません。そこで、カラーメタルラック(粉体塗装)やシンプルメタルラック等(亜鉛めっき)を除き、100アイテム以上を片っ端から確認しました。別売棚板なども調べましたが、クリアコーティングが施されている事実は他の商品では確認できませんでした。
2024年4月リニューアル時から?
2024/4/10 キャスター無しリニューアルしました
型番:SE-918EV→SE-918E
果たしてSE-918Eは以前からクリアコーティングを施していたのか。はたまた最近になって仕様を変更したのか。判然としないので、八方手を尽くして調べまくりました。
その結果、2021年4月時点のキャッシュを発見。そこにはクリアコーティングに関する記載はありませんでした。
よって、少なくともそれ以降に仕様を変更したと考えるのが自然です。また、2024年4月にリニューアルしたということですから、そのタイミングでクリアコーティングを採用したと考えることができると思います。
亜鉛メッキ不発で方針変更?
アイリスオーヤマは「シンプルメタルラック」および廉価仕様の「シンプルメタルシェルフ」(上写真)というラックを2023年に発売しています。防錆性を高めた亜鉛メッキを施したラックです。しかし、これがどうもうまく展開できなかったようで、1年を経てラインナップのほとんどが販売を終了しています。
ここからは完全に私の憶測ですが、すずメッキを施した「ルミナス・プレミアム」に対抗しようと画策するも不発で、このままではクリアコーティング推しのルミナスラックにリードを広げられかねないということで、遅ればせながら売れ筋商品であるSE-918Eからクリアコーティングを試験的に導入したのではないでしょうか。
現時点であまり大々的に宣伝していないのは、ラインナップの他の商品では未採用だから。一通り採用が済んでから、さも昔からクリアコーティングを採用していたような顔をして販売するつもりじゃないかなと思います。
ルミナス互換ラックとの比較
メーカー | アイリスオーヤマ | ドウシシャ |
---|---|---|
シリーズ | メタルラック | 25mm |
ライト | ルミナス互換 | |
品番 | SE-918E | EL25-90185 |
サイズ(mm) | 910×460×1785 | 915×460×1740 |
棚板1枚あたり耐荷重 | 75kg | 80kg |
ラック全体の耐荷重 | 375kg | 400kg |
クリアコーティング | ○ | ○ |
キャスター | 別売 | 付き |
税込価格 | 7,480円 | 7,980円 |
※サイズ、耐荷重はアジャスター脚装着時 ※税込価格はアイリスプラザおよびルミナスクラブショップの2024年7月25時点
先にクリアコーティングを実装していたドウシシャのルミナス互換ラックと比較してみるとどうでしょうか。
以前であれば、「価格がほぼ同じならサビに強いクリアコーティングのルミナス互換ラックのほうが買い!」という結論だったと思います。しかし、SE-918Eもクリアコーティングならルミナス互換ラックを選ぶメリットはキャスターが最初から付いているという点くらいです。現在、SE-918Eはアイリスプラザでは売り切れですが、もし同じセール価格で送料無料ならSE-918Eのほうを選ぶと言う人も多いのではないでしょうか。
ちなみに、ルミナスラックのクリアコーティングはアクリル系です。エレクター、アイリスも同様と思われますが、紫外線には強くないため、いくらサビに強くても屋外での使用には適さないのです。
なお、クリアコーティングでも紫外線や摩耗によってメッキが露出し、サビが出ることがあります。DIYで自然塗料を塗ることで防錆性を高めているというユーザーがいますが、これは理に適っています。自転車の整備時に防錆塗料を施したボルトにグリスを塗り込むのと同じで、油が水分子を弾いてくれるからです。ただし、油ですから木材と違って内部に浸透せず、表面がベタベタします。独特のニオイも生じます。
いやー、ここに来てこういう展開が待っているとは想定外でしたねー。てっきりこのままルミナスラックの独走が続くのかと思ってましたが、分からなくなってきた感じがします。
ルミナス互換ラックは専用のオプションパーツがなく、高価なレギュラーシリーズなどのパーツを買う必要があります。一方で、廉価版のメタルシェルフには一部サイズ限定ながら別売棚板が用意されており、サイズバリエーションもそれなりに揃っています。ルミナスラックもスリムシリーズならメタルシェルフよりもサイズバリエーションが多くて別売棚板の用意もありますが価格はちょっと高めです。
ルミナスラックも低価格帯の層を厚くしないと、ホームセンターの売場で勝ってもネットショッピングで負けるという事態になりかねないですね。
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